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450 鬼すべ

2020.03.02
毎年、1月7日は老松神社の“鬼すべ”の日である。その昔、疫病が流行したとき、疫鬼を追い払うため、始まったと伝えられる神事である。

前原の9つの行政区が当番を持ち回りなので、9年毎に回ってくる。今年の当番町は店長大神の”上町中央“だ。当番町の厄年の男が大鬼になる。朱塗りのお面をかぶった大鬼を脇鬼が両脇から抱え、その後をらくだの肌着と股引姿に鬼の角として縄を頭に巻いた大人、子ども40人の集団が続く。

神社を出て、加布羅にお潮井取りに行った後、町内を駆け巡る。途中9ヶ所の接待所で接待を受けるが、まず大鬼が大杯のお酒を振舞われる。それを合図にみんなも酒をかっ食らう。大鬼が飲み残した酒は脇鬼が飲み干す。お酒が強くないと務まらない重要な役目なのだ。

これがそれぞれの接待所で延々と続くので、「鬼じゃ、鬼じゃ」のかけ声勇ましく、昼過ぎに神社を出発した鬼集団は次第に酔っ払い集団と化していく(笑) いやいや、町中の罪や穢れなどを背負いながら走るので、ヨロヨロ、フラフラしてくるのだ。町中を駆け巡り、夕方頃には鬼集団は神社に戻ってくると、“鬼すべ”のクライマックスを迎える。

大鬼は神社本殿に上がろうとする。それを当番町の長老が豆をぶつけて、本殿横の鬼すべ堂に追い込む。鬼すべ堂に大鬼が入ると、小鬼たちが、松の枝を燃やした煙で大鬼をいぶり出し、罪や穢れを追い払う。今年の大鬼はJC後輩の千住君。あんなに飲んでいたのに、りっぱに役目を全うした。

ところで、前々回の18年前は当時42才だった店長大神が大鬼をさせてもらった。酒の強くない店長大神も脇鬼に支えられながら町中を廻り、何とか潰れる事なく、昔の中村家具の接待所までたどり着いた。
そこで脇鬼が店長大神に囁いた。「もう神社まで後少しやし、あんまり鬼が酔ってないのも様にならんちゃな~い?」 の一言に安堵し、コップ酒を立て続けに2杯飲んで走りだした・・・。

老松神社を目指し、30mほど走ったビガッドの裏辺りで記憶が途切れる。瞬きした次の瞬間 「ここはどこ?私は誰?」状態(笑) 店長大神が目を覚ますとなんと自宅の布団の中だった。店長大神は神社でのクライマックスの記憶は全くないが、ヘロヘロになりながらも一応役目は全うしたらしい。遠い昔の懐かしい思い出である。



鬼集団と一緒に 長谷川法世さん